ストナン神話体系〜ストってない夜が気に入らない〜

ナンパ師エイジのストリートナンパ紀行文。

西日本遠征・福岡編1 〜いのち短し恋せよ少女〜

「腰の据わっていない秀才よりも、腰の据わっている阿呆の方が、結局は人生を有意義に過ごすものだよ」

森見登美彦 『四畳半神話体系』より〜

 

 

私は間違いなく秀才タイプな人間だ。

卒論を書かずにブログを書いてはいるが間違いなく秀才である。

 

ナンパにおいてもそうだ。

ナンパブログTwitter、note。あらゆるテンプレートや先人の知恵をパクり、もとい拝借しながらひたすら実践し自らのものにする。

 

裏を返せば応用の効かない阿呆なのである。

遠征の際にはこの欠点が遺憾なくかつ顕著に発揮される。

 

「遠征グダ」

 

初めての土地でどうしていいかわからなくなる。

土地勘がないせいで迷子になる。

女の子の雰囲気がわからずどんな反応が返ってくるのかと恐怖する。

まさしく陰キャの極み!

 

 

そのくせ遠征は好きだというのだからまさしく手の施しようのない阿呆である。

 

 

 

 某日

私は小雨の降る天神のストリートにいた。

 

まだ野生だった頃、この場所でナンパをしたことがあった。美しい黒髪の乙女との邂逅を求めて徘徊するもなかなか声をかけることのできなかったあの頃の私とはもう違う。

 

 

最初はゆっくりと。次第にペースを上げて声掛けをする。

バンゲすることには何の意味もない。

遠征でわざわざ遠方まで来ているのだから即以外の結果は不必要である。

 

その時、私の目の前をひとりの美しい乙女が通りかかる。

黒髪の乙女…ではなかったが美しい暗めの茶髪。白く透き通った肌。間違いなくスト高(スト6)である。

 

彼女に声をかける前にとりあえず私は彼女と私を結ぶ赤い糸が路上に落ちていないかどうか、鵜の目鷹の目で探した。

 

残念ながら運命の赤い糸は見当たらなかったが、この夜の覇権を握ることで手に入るであろう彼女とのロマンティックな逢瀬に期待しつつ声をかける。

 

 

「こんばんは。私は今貴女をナンパしているところなのですが、貴女は今何をされているところですか?」

 

クスっと笑ってくれる彼女。

ああ、今宵の主役を張るのどうやらこの私らしい。

 

 

話を聞くと彼女は野球観戦の帰りらしい。やはり福岡の人々は皆ただならぬホークス愛に満ちている。他県の人間である私には理解しかねるが野球を愛する者としてこの話題で盛り上がるのもやぶさかではない。

 

「ホークスも負けてしまったことだしこのままいつも通りの1日を終えてしまうのも勿体ないとは思わないかい?一緒に非日常への1歩を踏み出してみようじゃないか。

これはホークスが敗れたことによる自棄酒ではなく、2人の出会いへのロマンティックな乾杯だってことだけは勘違いしないでいてくれたまえ」

 

彼女は私の提案を了承した。

 

 

 

 

 

話は変わるが私はキャッチという人種がどうも苦手だ。

道行く人々に次々と声をかけ「お安くしますよ」という疑わしい言葉とともに自らの店という奈落に彼らを連れ込もうとする。

顔を紅くしたスーツ姿の次の止まり木さえみつかればどこでもいいといった風情のサラリーマンならまだしも、これからこの夜の覇権を握るべくロマンスを追い求める私と乙女の2人組に声を掛けてくるなんて言語道断、万死に値する行為である。

 

今宵もそんなキャッチにうっかり捕まってしまった。

乙女の手前キャッチを邪険に扱うこともできない。

 

「お兄さん方、今宵はどういったお店をお探しでしょうか?」

 

「話しかける時は背後からではなく斜め45度手前からの方がオープン率が上がりますよ。もう一度フロントアプローチからよろしくお願いします」

 

『よし、これで心も折れたことだろう。もう話しかけてくるなよ』

 

「わかりました!じゃあ前からもう一度失礼致します。今夜は何をお探しでしょうか?」

 

 

私は感服した。そして自らのいやらしく小憎らしい態度を恥じた。この青年(のちに私と同い年と判明する)は私の嫌味を真摯に受け止める実に器の大きい人物だったのだ。私のような矮小な心と股間しか持ち合わせていないような男はいっそ筑後川下流まで流されて河口付近の石ころにでもなってしまいたくなった。(流石に嘘である。股間は矮小ではない)

 

挙句その青年は自らの店ではなくおすすめの美味しい食事処を我々に紹介し店に問い合わせまでしてくれた。私のキャッチに対する見方を変化させる出来事であった。

 

 

けっきょくキャッチの青年に紹介された店は閉店時間が迫っていたため別の居酒屋に入店。

横並びのカウンター形式の個室という素晴らしい席に通され店員の心遣いに感謝する。

今宵は天も私に味方しているようだ。

 

 

麦酒で乾杯しお互いについて語り合う。

今宵の乙女は

・24歳

・ピアノの先生

・地元は九州だが大学が都内で卒業後は1年ほど企業の受付嬢をしていた

・見た目、雰囲気ともに上品さが漂っている

・Dカップ

 

非常に好みなタイプである。

とりあえず2人の間に赤い糸が隠されていないか全力で探る。

 

大学卒業後彼氏がおらず日常に退屈している。

一夜の過ちを犯したことはない。

 

以上の2点から私の中で今宵の戦い方が定まる。

優柔不断でなかなか一歩が踏み出せないなら今宵は私と一緒に一歩踏み出してみないかい?

このスタンスでいこう。

 

 

 

 

某有名旅ナンパ師をパクり、もとい模倣し新大阪駅で購入しておいた神戸プリンを餌に我が家(エアビー)に彼女を連れ出す。

 

プリンを食べ終わるタイミングで仕掛け始める。

 

「2人きりで静かに話せるところで貴女と話したいと思ったからここまで来てもらった。とりあえず私の隣に来てくれないだろうか?」

 

「ちょっと恥ずかしい…」

 

「じゃあ2択から選ばせてあげよう。隣に座るか、10秒間私の目を見つめ続けるか。勿論10秒ともたなかったらキスをするが。さあどうする?」

 

 

基本的に押しに弱いタイプの女性なため2択の強制選択(double bind)から逃れることができない。

どうしても選べなさそうなときは一見譲歩しているようで実はそれほど譲歩していない3択目を提供する、もしくはより難度の高い3択目を提供すると効果的である。

 

例えば、

「前からハグされるのと後ろからされるのとならどっちがいいかい?」

 

「どっちもハグじゃん笑 選べないよ〜」

 

「それなら3つ目の選択肢をあげよう。前からハグか後ろからハグかほっぺにキスか。さあどれがいい?勿論キスはそっちからしてもらうよ」

 

といった感じである。

 

 

 

 

時間は非常にかかるが恥ずかしがる乙女の姿を見ていると非常に可愛らしくこちらの表情も終始緩みがちである。

あまりデレデレすると見るに耐えない見た目になってしまうため時々表情を引き締めつつ徐々に乙女の心の壁を崩していく。

 

 

 

 

そして我々はついに赤い糸で結ばれた。

私がこの夜の覇権を握り天神の夜の主役に躍り出た瞬間だった。

 

 

なかなか一歩が踏み出せず恋愛に対して奥手な彼女。願わくば今宵の経験がそんな彼女が一歩踏み出す契機になってくれれば嬉しい限りである。

 

 

 

 

翌朝彼女を見送り再び幸せな気持ちで私は眠りについた。

 

ナンパには人生の妙味が詰まっている。改めて実感した。

 

 

 

目が覚めたら次なる戦いが私を待っている。

 

 

 

 

つづく